非居住者が国外で退職金を受けた場合でも、その退職金のうち、日本国内で勤務していた期間に対応する部分の金額については、所得税が課されます。
原則的取扱いとは別に、「退職所得の選択課税」を選択することもできるので、検討を失念しないように注意しましょう。
※草野球の聖地、大宮けんぽグラウンドより
20.42%の税率で源泉徴収
非居住者(日本に住所も居所も有していない者)に対して退職手当等を支払う場合には、その総額のうちの居住者であった期間に対応する部分が国内源泉所得に該当し、この部分のみが課税の対象となります。
この場合、居住者であった期間に対応する部分(国内源泉所得)の金額は、原則として支払を受けた退職手当等の総額に、その総額の計算の基礎となった期間に占める居住者であった勤務等の期間の割合を乗じて算出することとされており、支払を受ける非居住者が国内に恒久的施設を有していいない場合には、この算出された金額に20.42%の税率による分離課税の方法により課税されます。
なお、国内源泉所得の支払が国外で行われる場合であっても、その支払を行うものが国内に事務所・事業所を有してるときには。その者がその国内源泉所得を国内において支払うものとみなして源泉徴収を行うこととされています。
退職所得の選択課税制度
上記にかかわらず、退職所得については、本人の選択により、非居住者期間内の所得であったとしても、その退職に基づいてその年中に支払を受けた退職手当等の総額を居住者として支払を受けたものとみなして、居住者と同様の課税の適用を受けることができます。
したがって、すでに非居住者として源泉徴収された税額が、選択課税の適用により算出された税額を上回る場合には、選択課税の適用を受けることにより、確定した税額を上回る額について還付を受けることができます。
この選択課税を選択した場合には、その退職手当等の総額を居住者として受けたものとみなして
①退職所得の計算の規定(所得税法第30条)
②税率の規定(所得税法第89条)
を適用して所得税を課すこととしており、この場合に各種所得控除の適用はないことになります。
計算例
具体的事例をあげると、次のとおりとなります。
例)
日本法人A社に入社。日本本社で25年勤務。
その後、オーストラリア支店に異動。オーストラリア支店で5年勤務。
オーストラリア支店勤務を最後に退職。その後はオーストラリアに住んでいる。
退職時には退職手当3,000万円受け取っている。
なお、日本国内に恒久的施設は有していない。
1.源泉徴収税額
① 30,000,000円 × 25年/30年 = 25,000,000円(国内源泉所得)
② 25,000,000円 × 20.42% = 5,105,000円(源泉徴収税額)
2.選択課税を行った場合の税額
①{30,000,000円 ー(400,000円 × 20年 + 700,000円 × 10年)}×1/2 = 7,500,000円(退職所得の金額)
② 7,500,000円 × 23%ー636,000円= 1,089,000円(所得税額)
③ 1,089,000円 + 1,089,000円 × 2.1% = 1,111,869円(所得税、および復興特別所得税額)
3・選択課税を行った場合の還付税額
5,105,000円 ー 1,111,869円 = 3,993,131円(還付金額)
退職所得の選択課税の申告
還付を受けるために選択課税の申告をするためには、退職金の支払いを受けた年の翌年1月1日以後に「退職所得の選択課税の申告書」を税務署に提出しなくていはなりません。
非居住者が日本国内で申告する場合、一般的に『納税管理人』を定め、納税管理人を通じて申告することになります。
ただし「退職所得の選択課税の申告書」という様式は国税庁のホームページ内に掲載されていませんので、「確定申告書B」の様式を使用して申告することになります。
合わせて読みたい「納税管理人」の提出先は?
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【昨日の『心・技・体』】
心…読書(翁問答 / 中江藤樹)
技…なし
体…トレーニングジム
・ホグレルマシン上半身・下半身 11種 30回×4セット
【編集後記】
現在開催されているサッカーワールドカップ。
前評判を覆し、日本は今のところ1勝1分と大奮闘。
結果がすべてのプロスポーツではありますが、サッカーは特に厳しい目で見られます。
個々にかかる重圧はものすごいものでしょう。私には想像すらできません…。
体格的に劣るアジア勢は各国苦戦していますが、日本には何とか決勝トーナメントに進んで欲しいです。
きばれ!にっぽん!